神輿や隠居神輿を八枝神社のお仮屋(神楽殿)から担ぎ出すことを「お山出し」といい、この時祭典が行われる。お山出しの祭典を前に、若衆頭より挨拶と新担ぎ手の紹介、提灯の配布、注意事項の説明が行われ、お浄めの御神酒をいただく。その後、関係者及び来賓は神楽殿前に整列し、お山出しの祭典となる。お山出しの祭典が終了し、挨拶や来賓紹介の後に、花火と若衆頭の合図でお山出しとなり、同時に囃子連の演奏が始まる。神輿と隠居神輿は境内を揉んで歩き、当番は幣束(大幣)を持ち神輿を先導する。神輿、隠居神輿、囃子連のタカウマの順に鳥居を出て、渡御が始まる。なお、お山出しの際の囃子の曲目は「ヤタイ(屋台)」で、移動中の囃子は「ニンバ(ひょっとこ)」や「カマクラ(鎌倉)」などが演奏される。
 渡御の途中、基本的には神酒所以外の家に立ち寄ることはないが、例外的にどろいんきょに貢献のあった故人の家に立ち寄ることがある。

祭典・お山出し
7月20日(日)
タカウマの囃子演奏
 タカウマとは、木枠の一方の側に大太鼓、もう一方に小太鼓をつけたもので、脚部の車で移動しながら囃子の演奏が出来るものである。祭り当日、お山出しの前までに、上宿公民館を出て、タカウマにて演奏しながら、八枝神社の境内に移動する。お山出しが始まるとともに囃子を再開し、隠居神輿の後を演奏しながら追う。なお、どろいんきょをしている間は、囃子の演奏が続けられる。

タカウマでの囃子演奏
7月20日(日)
 渡御が行われている神酒所には、お山出しから4班→5班→6班→7班→8班→10班→1班→2班→流し踊り・山車の引廻し→2班→3班→お山納めの順に進み、このうち4班、5班、8班、1班、2班の神酒所でどろいんきょが行われる。
 お山出しの祭典を終え、神社を出た一行は、神輿、隠居神輿、タカウマの順に神酒所に到着する。神輿・隠居神輿を台の上に安置し、御神酒を供える。タカウマまでが神酒所に揃うと手締めをして休憩となり、接待料理が振る舞われる。
 どろいんきょが始まる時は、若い衆が隠居神輿の周りに集まり、囃子連の演奏が始まる。当番が供えられた御神酒を隠居神輿のエボシにかけ、続けて同じ部分に参加者の1人が水をかけるのを合図に、隠居神輿を台から転げ落とし、どろいんきょが始まる。
 どろいんきょの最中は当番や若衆頭、行事から転がし方の指示があり、周囲の人が水をかける。また、囃子は「ヤタイ(屋台)」が演奏される。
 どろいんきょの転がし方には、天地を逆さまにして、ヤカタの部分を地面に置いて中心にし、トンボを押し合うようにして回転させる「キリモミ」や、トンボを地面と垂直に立てて倒す「トンボガエシ」や「タテガエシ」と呼ばれるものなどがある。またトンボガエシでは、立てて倒れる瞬間にトンボの間をくぐることもある。
 どろいんきょを終える時は、当番や若衆頭から指示を出し、まず神輿が神酒所を出発する。次に、同様に当番や若衆頭からの指示でどろいんきょが終了する。以前は囃子が「ニンバ(ひょっとこ)」に変わることも、どろいんきょ終了の合図であった。現在は、どろいんきょ終了とともに、囃子の演奏も終了するようになっている。その後、神輿を追って、隠居神輿、タカウマと続き、次の神酒所へ向かう。

どろいんきょ巡行図
(大きな地図を表示する。)
 

どろいんきょ1回目(4班)
7月20日(日)

どろいんきょ3回目(8斑)
7月20日(日)

どろいんきょ4回目(1班)
7月20日(日)

どろいんきょ5回目(2班)
と山車
7月20日(日)
 
 

どろいんきょ5回目(2班)
平成27年度7月19日(日)

どろいんきょ6回目(2班)
平成27年度7月19日(日)
     
どろいんきょを行わない神酒所
 どろいんきょを行わない神酒所では、当番の合図に従って、まず神輿が神酒所を出発し、その後に隠居神輿、タカウマと続き、次の神酒所に向かう。
 

6班神酒所
7月20日(日)

7班神酒所
7月20日(日)

10班神酒所
7月20日(日)

3班神酒所
7月20日(日)
 
 

3班神酒所
平成27年度7月19日(日)
       
おばば
 神酒所と神酒所の間を、神輿が渡御している時、囃子連の「カマクラ(鎌倉)」や「ニンバ(ひょっとこ)」の演奏に合わせて担ぎ手が「おばば」と呼ばれる伊勢音頭を歌うことがある。これは伊勢音頭の歌い始めが「おばばなー」で始まることに由来する。おばばの歌詞には、次のようなものがある。

おばば
7月20日(日)
おばば歌詞
 2回目の5班神酒所では、余興として、どろいんきょの最中に、垂直に立てた隠居神輿のヤカタの上に置いた板の上で、ひょっとこ踊りが行われる。なお、10班の神酒所でもひょっとこ踊りが披露される。囃子は「ニンバ(ひょっとこ)」が演奏され、下宿の囃子連が手伝うことになっている。
 また、どろいんきょの途中に、荒川への川入りがある。本来の祭りの行事ではないが、復活以降の恒例行事となっている。5班で行われる2回目のどろいんきょの最中、隠居神輿を逆さまにして担ぎ、神酒所を出て、川岸に向かう。隠居神輿を荒川に投げ入れ、若い衆もそれにしたがって川に飛び込む。少し下流に流されてから岸に上がり、また逆さまに隠居神輿を担いで神酒所に戻ると、どろいんきょが再開される。神輿と隠居神輿は、進んだ道を戻らないことが基本であるが、隠居神輿を逆さまに担ぐことで、本来の巡行ではないことになり、一度進んだ道を戻ることができる。

どろいんきょ2回目(5班)
ひょっとこ踊り・川入り
7月20日(日)
 2班の神酒所では、どろいんきょの途中、山車の引廻しがある。川に入る際と同様に、隠居神輿を逆さまにして担ぎ出し、旧開平橋付近まで運ぶ。模様替えが行われて山車になった隠居神輿には、芝居の主人公にふんした若い衆が乗り、その山車に縄を付けて引く。この際、若い衆に混じり見学者も一緒になって引いていく。この時、囃子連は囃子屋台で囃子を演奏する。囃子は「ニンバ(ひょっとこ)」や「カマクラ(鎌倉)」が演奏される。囃子屋台では、子ども囃子が演奏に参加するため「ヤタイ(屋台)」は演奏されない。八枝神社の前まで来ると、山車を鳥居に向かせて、手締めをする。かつては、1班の神酒所の時に山車の引廻しを行っていたため、1班の神酒所まで戻っていたが、現在では橘神社の前までになっている。橘神社まで引いたら、隠居神輿を元の姿に戻す。再び逆さまにして担ぎ出して2班の神酒所に戻り、どろいんきょの再開となる。これも川に入る際と同様に、本来の巡行ではないことを意味し、一度進んだ道を戻ることができる。また、山車の引廻しの前には、上宿地区の女性たちが中心となった流し踊りが行われる。
 

役者準備
7月20日(日)

流し踊り・山車の準備
7月20日(日)

どろいんきょ5回目(2班)
と山車
7月20日(日)

隠居神輿を山車にする
平成27年度7月19日(日)
 
 

流し踊り
平成27年度7月19日(日)

囃子屋台での演奏
平成27年度7月19日(日)

山車の引廻し
平成27年度7月19日(日)

山車を隠居神輿に戻す
平成27年度7月19日(日)
 
 神輿や隠居神輿が渡御を終え、八枝神社に帰り、お仮屋(神楽殿)に戻ることを「お山納め」という。最後の神酒所を出ると、一行は八枝神社に向かう。神輿や隠居神輿はお山出しの際、境内から出る前に揉んで、なかなか鳥居の外に出ないが、お山納めの時は、なかなか境内に入らないものである。神輿、隠居神輿の順に鳥居をくぐり境内に入る。まず神楽殿に神輿が納められ、次に隠居神輿が納められる。なお、お山納めの際の囃子は「ヤタイ(屋台)」である。当番が持っていた幣束(大幣)は、神輿・隠居神輿のそれぞれに立て掛けられる。参加者等一同は、神楽殿前に集合し、神社総代の挨拶、若集頭の挨拶の後に手締めをして、祭りは終了する。

お山納め
7月20日(日)